概要

わが国の科学技術の戦略的重点化における社会的課題に対応した4分野であるライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料のいずれの分野においても、環境調和型の高機能・高性能材料を環境に負荷をかけずに短期間で創成・開発できる手法の確立が要請されている。このような社会的要請に応える科学技術の発展を目的として、学問的に新しく基礎的でありながら近未来社会に貢献することを基本戦略とする計算機マテリアルデザインを主題とした特定領域研究を推進する。

計算機マテリアルデザインは、計算機上の仮想実験室において、再生医療材料、環境調和材料、高効率エネルギー変換材料、安全・安心のためのセンサー材料等、開発の機運が高い高機能・高性能材料を効率よく開発する手法である。

計算機マテリアルデザインは3つの過程、(i)物質の電子の状態を量子力学的にシミュレートすることにより(量子シミュレーションと呼ぶ)試行物質の性質・機能を予測する「物性予測」、(ii)予測された物性がなぜ発現するかを理論的に明らかにする「物理機構の演えき」、(iii)さらにそれに基づいてより望ましい試行物質を生み出す「仮想物資の推論」、を反復することによって、ターゲットとする物質・構造を設計していく。この3つの過程からなるサイクルをマテリアルデザインエンジン、また、量子シミュレーションの逆を行うことを量子デザインと呼んでいる。

従来型の材料開発を計算機マテリアルデザインで置き換えていくためには、後者が精度・信頼性と高能率性という点で十分な性能を備えていることが必要である。そのような性能は、計算機マテリアルデザインの主要部を占める物性予測の方法に強く依存している。現在、物性予測のための現実的な方法として広く用いられている局所密度近似(LDA)に基づく第一原理電子状態計算は量子シミュレータとして多くの実績を挙げてきた。しかし、計算機マテリアルデザインにおける物性予測手段として必ずしも万全ではなく、なお、次の点について研究・開発を推進する必要がある。

上記の点を念頭に、本領域研究では次世代量子シミュレータおよびこれを用いた次世代量子デザイン手法を開発・公開・普及し、これを用いて計算機マテリアルデザインを行う。