黒木研究室 -大阪大学理学研究科物理学専攻-

研究室情報について

当研究室への進学を考えている学生の皆さんへ

物質の多様性とその奥に潜む普遍性が織り成す物性物理学の世界は極めて魅力的です。 当研究室は物性理論の研究室であり、特に固体中の電子状態に焦点を当てた研究を行っています。 以下では、進学を考えてみる学生の皆さんに、当研究室において研究をしていくうえで特に重要と 考える点について述べます。

当研究室における研究の大きな柱の一つは電子相関に起因する諸問題であり、その中でも非従来型超伝導は重要な位置を占めます。電子相関の問題は、膨大な数の電子たちがお互いにクーロン斥力によって反発し合いながら運動する複雑な問題に挑みます。1023個もある電子の多体問題を量子力学的に解くことの大変さを想像してみてください。とても厳密に解くことはできないので、様々な手法を組み合わせつつ真実に少しずつ迫ることになります。一方、超伝導も古くから物性物理学における魅力的な難問として研究者を惹きつけてきました。超伝導は二つの電子が仲良く電子対(クーパー対)を形成することによって、系全体としての波動関数の位相をそろえることができるようになって出現する巨視的量子効果です。通常の超伝導では、クーパー対形成に必要な引力を仲介するのは「フォノン」ですが、私たちの研究室が主たる研究対象とする非従来型超伝導体においては、むしろ、電子間のクーロン斥力に起因する電子相関が超伝導の起源となります。このような不思議な現象に対して、謎を解いてやろうとする「探究心」こそが重要です。

もう一つの重要な要素は「チャレンジ精神」です。電子相関の問題に挑むことそれ自体がチャレンジする気持ちなくしてはできないことですが、実験的に観測された現象の理論的理解にとどまらず、そこで得た知見をもとに、実験に先んじて新物性や新物質を予言しようとするよりアグレッシブな気持ちを併せ持ちつつ研究を行ってほしいと思います。当研究室の大きな研究テーマの一つである熱電効果で実際にあった例をあげると、ある物質の熱電性能に対して得た理論的理解をもとに、その構成元素の一部を別の元素に置き換えることによって、大いなる性能の向上が見込めることを理論的に予想したところ、実際にそれが現実の実験で観測されました。今後、このような研究の方向性に力をいれることで、新規熱電物質や高温超伝導体などの新しい機能性物質の理論的物質設計に、若い人たちと一緒にチャレンジしていきたいと考えています。自然科学の世界においては、何かを初めてやる・見つけることがとても重要です。それも「日本で初めて」ではなく、「世界で初めて」が必要です。電子相関という難問題について、世界で初めての発見をしてやろうとする「チャレンジ精神」旺盛な人たちを歓迎します。